月夜見
 残夏のころ」その後 編

    “今年も来たよvv”


消費税が上がったから、
値札との差額にドキッとすることがあるとか。
暖かいかと思や、コートが要るほど寒くなったり、
短い間にも妙に寒暖の差が大きかったせいか、
なかなか風邪やインフルが終息を見ないとか、
何のそれか アレルギー症状を出す子が増えたとか。
極寒で難儀した後の待望の春もまた、
色々と問題多しだったりするようだけど、

 「そんでも連休は何かワクワクするよなっvv」

旅行とかするほどの予算とかはないけど、
出掛けるだけで楽しい、公園とか催しも近場で結構あるし。

 「去年のGWは、
  エースが最終日に“道の駅”ってトコへ連れてってくれて。」

そこでBBQフェスっていうのをやってて、
各地の名産肉の食べ比べってのがあったりして、
早ぐい競争ってので勝ったら
優良肉5キロもらえるっていうんで頑張ったりもして。
あれは楽しかったなぁと、
見るからにうっとりしておいでのルフィさんだったりし。
去年は確か今年と同じくがっつり飛び石だったはずなので、
そういうイベントが、
しかも最終日まであちこちで盛んだったのも頷けて。

 「でもなあ、今年はウチも忙しいらしいから。
  最終日は昼まででいいとかいう、
  去年と同んなじ運びにはならんかもだよな。」

もしかして、その最終日のご褒美は、
さりげなく構えた格好の、
こちらの坊っちゃんのお誕生日祝いだったのかもしれないのにね。
兄上のエースは勿論のこと、
従業員のお兄さんやおじさんたち、パートのおばさまがたからも、
そりゃあ可愛がられているマスコットのルフィさん。
いつもお元気で朗らかで、
にぎやかすぎて、
てぇいうるさいぞと怒鳴られちゃうこともなくはないけど、
ありゃごめんなと素直に謝るところが憎めない。

 『それにそこまで叱るのは副店長くらいのもんだし。』

叱るのは、ベックマンさんだけで、

 『二日酔いの頭に響くだろうがとか言って怒るクチへは、
  周囲があとあと黙ってないしね。』

よって、性懲りもなくそういうことをするといや、
今やシャンクス店長くらいのものだと、

 “ご本人が言ってりゃ世話ないよな。”

ほんの最近に当人が、しかも自慢げに言ってたのを思い出し、
しょうがねぇなぁとくつくつ笑ったのは。
家具センターのイートインにて、
そのGW用の特別メニュー、
当店でも売り出し中のシリコン製の調理グッズを使った
鷄の香草蒸しを挟んだクロワッサンサンドと、
やはり特価で発売中のミルミキサーを使いましたという、
ベリーとハニーのスムージー、
どうぞおあがりと特別試食要員へ呈しておいでのサンジさんで。

 「おお、これ美味んまいvv」

水菜がシャキシャキで、ふんわり匂って丁度いいぞ、
お前ネ、そういう時は“香って”って言うもんだぞと、
従兄弟同士のざっかけない会話を、
傍らから苦笑交じりに見やっておいでなのが、

 「お前のほうはどうなんだ。」
 「あ、はい、美味いっす。」
 「じゃあなくて。」

同じものを出されているの、だが、
それを食べるより小さな先輩さんの腕白ぶりを観る方が
格別の御馳走だと言わんばかりのお顔をしているものだから。
おやまあと、年長のお兄さんには何かしら察せるものもあるようで。

 「連休の最終日っていや、……」
 「サンジ、お代わりほしいっ。」

はぁいと手を挙げるやんちゃな坊やへ、
ああ判ったよ、待て待て口のまわりを拭けと、
こちらへは話半分になって
従弟殿のほうへ手をかける金髪のマスターさんだったが。
そんな彼らの微笑ましいじたばたを眺めやりつつ、

 “いや、誕生日が5日だってのは知ってるし。”

子供の日と重なるので、祭日なのが半分ほど詰まんねぇと、
柔らかい頬ふくらませ、不満げに言ってたのを、
こちらの剣道青年もまた覚えておいで。
何かくれとまでは言わないけれど、
そっか誕生日かーって、おめでとうって
ガッコの友達からあんまり言ってもらえねぇもんなと。
ちょっぴり膨れてそんなお言いようをしていたの、
昨年の当日、店が引けてから、
お家での宴へ大勢と一緒に招かれたその席にて、
ご本人から聞かされたほどで。

 『ゾロは確か十一月だよな。』
 『え? あ・そうっすよ?』

確か祭日にも重なってねぇもんな、いいなぁと、
まだずっと先のことなのに、ちゃんと覚えていたのが意外で。
いやその前に、この先輩へ話したっけかなぁなんて、
そこが曖昧なもんだから、
どぎまぎしちゃったのをも思い出し、

 「あ? どした、ゾロ?」

 「いや、何でもないっすよ。///////」

何でもなくて赤くなるかよ、
さてはサンジ、ゾロの方には酒でも盛ったか。
そんないかにも子供っぽい言い掛かりを持ち出すルフィさんの、
どこまで本気か朗らかなお言いようへこそ、
救われたように こそりと吹き出してしまった、
武骨なはずの剣豪青年さんだったそうで。
つややかに磨かれたカウンターの上は、
作り物のオブジェなんかじゃあない、
早出のビワや切り口も瑞々しいスイカが
若葉とともにガラスの器へ飾られてあり、
いよいよの初夏を思わせる陽に、その縁を七色に光らせて
小さな小さな虹を描いていたのでした。


  
HAPPY BIRTHDAY! TO LUFFY!




      〜Fine〜  14.05.03.


  *ウチでは小姫さんと母が
   鼻風邪に取っ捕まっているGWでございます。
   何か毎年この時期に持ち回ってないか、ウチって。
   いいお天気になって来そうなことだけが救い、かな?

   ともあれ、船長さん、お誕生日おめでとうっ!
   どんでん返し続きの本誌では
   また何か次の段階の正念場みたいで、
   何ならあっさり皆殺しにだって出来たんだという
   その手段だろう悪夢を持ち出しつつ、
   その上で まだ人の心をもてあそぼうという非道な輩。
   どんなものを背負っているかは知らないけれど、
   どうかその拳で粉砕して、すっきりさせてくださいませね。。


めーるふぉーむvv ご感想はこちらvv

bbs-p.gif**


戻る